2020年02月26日

「塔」2020年2月号(その1)

旧姓をあまやかなものといふ人よその感受こそあまやかならん
                  村田弘子

一般的に姓を変えることの少ない男性の方が「あまやか」と捉えがちな気がする。それに対して、作者は幻想に過ぎないと思うのだろう。

土砂降りの三回戦を観にゆきてサッカーボールが記憶にあらず
                  小林真代

子どもたちのサッカーの試合を見に行った場面。普通はボールの動きを中心に見るのだが、雨と泥と人でぐちゃぐちゃな感じだったのだ。

十一月にクリスマスソングを流しいる店に買い物せざるを
得ない               矢澤麻子

一か月以上前からクリスマスソングを流すことに抵抗を覚えるのだ。でも、近くには他に適当な店がなく、嫌でも曲を聴く羽目になる。

コンビニが二十四時間あいてゐたと古老語れど誰も信じず
                  益田克行

未来を想像した歌。時代の移り変わりとともに、かつては当り前だったことが当り前でなくなり、やがてあり得ないことになっていく。

広島に買ひにゆきたし三色とも赤とふカープの三色ボールペン
                  野 岬

三色ボールペンと言えば黒・赤・青が一般的だが、広島カープのチームカラーにちなんで三色とも赤なのだ。作者も広島ファンなのかも。

にぎりめしラップのうへから握りなほし少女は食(たう)ぶ
秋の列車に             篠野 京

上句は何でもない動作を詠んでいるが、目の付けどころがいい。確かに、おにぎりを崩さないように、軽くこんな仕種をすることがある。

posted by 松村正直 at 12:16| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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