君が行く道の長手を繰り畳ね焼き滅ぼさむ天(あめ)の火
もがも 狭野弟上娘子(巻十五・3724)
講演は中止になってしまったのだが、準備のために昨年の「短歌研究」2月号〜11月号に連載された品田悦一さんの「万葉の名歌 評価一新の企て」を読んだところ、すこぶる面白かった。
初回にこんなことが書いてある。(「短歌研究」2019年2月号)
弟上娘子の「情熱的」作風は、しかし、明治以前には決して高く評価されていなかった。
弟上娘子の秀歌を見出したのは、どうやら明治の新派歌人たちらしい。
晶子の華々しい活躍と、それを可能にした諸条件は、『万葉集』に情熱的女流歌人が発見される条件でもあったと見て、おそらく間違いないだろう。
なるほどなと思う。明治の和歌革新運動は自分たちの詠む歌を変えるだけでなく、過去に詠まれた数々の歌の評価をも一変させたわけだ。