歴史総合パートナーズ7。
水俣を訪れて水俣病の歴史や現在を学ぶとともに、3・11後の社会のあり方を考える本。
水俣病については学校で習った程度の知識しかなかったので、公害の問題を差別や格差、分断といった社会的な側面から捉え、そこに福島の原発事故と同じ構造を見出す視点が強く印象に残った。
肥薩おれんじ鉄道水俣駅を降りるとすぐ正面に、チッソ水俣工場の正門が見えます。この間の距離は50メートルもあります。というのも、もともと水俣駅はこの工場のためにつくられたからです。
駅の前に工場があるのではなく、工場の前に駅が作られたということ。それを知っているだけでも風景の見方が変ってくる。
そのチッソは、水俣の人たちにとって絶対的な存在でした。チッソの側に立つか立たないかで、生活を巻き込んだ分断を招きました。漁民暴動の際には工場の従業員と漁民との間の隔絶が、安賃闘争の際にはチッソで働く者同士の分断が、患者の座り込みの時には市民と患者との断絶が見られました。
こうした分断の構図は、原発の立地する町にも必ずと言って良いほど存在するものだ。
そのような学びの中で、原田正純がたどり着いた最も重要な理解は何だと思いますか。それは、「公害があるから、差別が起こるのではない」「差別のあるところに公害が起きる」という事実でした。
非常に大切で、説得力のある見解だと思う。
「歴史総合パートナーズ」(10冊)は2022年から高校の必修科目となる「歴史総合」のために刊行されたシリーズで、記述はわかりやすく内容は深い。おススメ。
2019年1月9日、清水書院、1000円。