2020年02月04日

「塔」2020年1月号(その2)

フェイントのゆるいボールが落ちて来つテレビ見ながらわが脚
動く                 丸山順司

バレーボールなどでスパイクを打つと見せかけて緩い球を打つフェイント。テレビを見ていて思わず身体が反応して動いてしまったのだ。

牛小屋にくっ付いていた外便所月ばっかりが思い出にある
                   中山大三

かつての日本家屋では便所が外にあることも多かった。この歌では何と牛小屋に併設されている。夜の便所に行く途中で見た月の美しさ。

箸袋に鶴の折り方書かれいて箸置きの鶴五羽になりたり
                   田宮智美

割り箸の袋を折って鶴の形の箸置きにする方法が印刷されていたのだ。見たらつい試してみたくなるもの。五名で食事している場面か。

北米の野鳥三十億羽減 星を剥がれていった羽音
                   田村穂隆

「三十億羽」という圧倒的な数字に驚かされる。「剥がれていった」が何とも痛ましい。地球上から失われてしまった数多くの鳥の命。

触れないと触れたいことがわからずに消去法にて指をからめる
                   中井スピカ

触れたいから触れるのではなく、触れることで触れたかった自らの気持ちに気づく。恋人と手をつなぐ時のちょっとした緊張感と嬉しさ。

ウェイター待たせに待たせボンゴレと君が言うから僕もボン
ゴレ                 坂下俊郎

「ボンゴレ」の繰り返しが楽しい。連れ合いが注文に迷って長々と待たせてしまったのが申し訳なくて、僕も同じものにしたのだろう。

日の差さぬ方をえらべばトンネルを抜けし車窓に海は見えない
                   黒木浩子

窓から差し込む日差しを避けて反対側の席に座ったら、せっかくの海の景色も反対側になってしまった。東海道新幹線などは、こうなる。

姑は二十時間の眠りより覚めて食事すコスモスを背に
                   生田延子

高齢でほとんど寝たきりの生活の姑。「二十時間」という具体がいい。長い眠りから覚めて食事する姿は、夢と現実の間にいるようだ。

posted by 松村正直 at 17:22| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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