敵が伊勢湾附近に上陸すれば、伊勢熱田両神宮は直ちに敵の制圧下に入り、神器の移動の余裕はなく、その確保の見込が立たない、これでは国体護持は難しい
『昭和天皇独白録』
同じく、木戸幸一内大臣は阿南惟幾陸軍大臣に対して、本土決戦計画を批判して次のように発言している。
君若し敵に上陸されて了つて三種の神器を分取られたり、伊勢大廟が荒らされたり、歴代朝廷の御物がボストン博物館に陳列されたりしたらどうするつもりなのか。
『木戸幸一日記 東京裁判期』
戦前・戦中の日本の体制や思想について、ある程度は理解しているつもりだったのだけど、こういうことが真剣に議論されていた事実には強い驚きを覚える。
三種の神器を奪われるという発想は、南北朝の争乱の頃だったらわかるけれど、これは1945年の話なのだ。実際のアメリカ軍はそんなこと考えもしなかっただろう。
皮肉な言い方をすれば、「三種の神器のおかげで本土決戦が防がれた」ということになるのかもしれません。