2019年12月31日

坪内稔典歌集 『雲の寄る日』

俳人で、「鱧と水仙」や「心の花」にも所属する作者の第2歌集。

俳句的な取り合わせや、人名を詠み込んだ挨拶的な歌、カバやサイなどの動物の歌に特色がある。

三月の雪の半島もしかして半島は春の櫂かもしれぬ
真っ青な空の初冬の碧南の人参畑海まで続く
ありふれた土器のかけらのような午後黒ビールなどちょっと思った
一皿の黒い葡萄が冷えている今夜は星が流れるだろう
天窓にちぎれ雲など寄って来る拾い読みするアリストテレス
そら豆の緑みたいな感情をころがしている一人の夕べ
発情の日には今にも死にそうでカバの福子は一トンの肉
遠くから船が戻って来たように突っ立っている朝のシロサイ

2首目、「碧南」(愛知県)という地名がよく効いている。
5首目、「天窓」と「アリストテレス」の響き合い。
7首目、「一トンの肉」が強烈。全身で身もだえしている。

2019年12月9日、ながらみ書房、2400円。

posted by 松村正直 at 09:23| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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