副題は「遺品整理人がミニチュアで伝える孤独死のはなし」。
遺品整理・特殊清掃の仕事に携わる著者が、孤独死の実態について書いた本。著者が制作した現場の部屋のミニチュア8点の写真が載っている。
このミニチュアがすごい。
部屋に残された机、椅子、洗面台、戸棚、カレンダー、酒のカップ、ペットボトル、ゴミ袋、新聞、猫、そして汚れやシミに至るまで、精巧に再現されている。
わたしは孤独死が悪いことだとは思っていない。人が亡くなることは誰にも止められないし、病院や施設などではなく住み慣れた我が家で逝きたいと思っている人は多い。自宅で一人で死ぬのが悪いのではなく、発見されるまでの期間が問題なのだ。
湯船のなかで亡くなると、居間などで亡くなった人よりも腐敗が早まる。なかでも、追い炊き、保温機能を備えたお風呂での孤独死の現場が、いまでも強く、わたしの心に残っている。
この仕事をしていて辛いと思うのは、汚物でも激臭でも、虫でもない。こんなふうに人間の「裏の顔」が垣間見える瞬間だ。
誰も自分の死に方を選ぶことはできない。人間が生きること、そして死ぬことについて多くを考えさせられる一冊だった。
2019年8月31日、原書房、1400円。