2019年12月24日

宇根豊著 『日本人にとって自然とはなにか』


NPO法人「農と自然の研究所」代表理事をつとめる著者が、百姓の視点から日本人の自然観を描き出した本。

自然と人間を分けて科学的・客観的に捉える「外からのまなざし」と、人間も自然に含めて体験や記憶に基づいて捉える「内からのまなざし」。この二つを行き来しながら、自然を見る目を養い、自然への向き合い方を深めていく。

赤とんぼが急に飛び始めるのは、田植えして四五日過ぎた頃です。日本で生まれる赤とんぼのほとんどは田んぼで生まれます。
私たちは自然の中で、自然の一員として生きものにまなざしを注いでいるときには、自然を意識することはありません。自然を意識する時は、「自然」という言葉を使うときだけです。
名前には、名づけた人の気持ちとまなざしが表れています。メダカと書くと単なる記号ですが、目高と書くと、目が高い(上にある)魚という意味が伝わってきます。
なぜ「田植えと言うのに、稲植えとは言わないのだろうか」と思ったのは、「稲刈り」を「田刈り」という地方があることを知った時です。

身近で具体的な話をもとにしながら、自然のあり方や人間の生き方の根本を探っていく。その「百姓の哲学」とも言うべきスタイルが魅力的な一冊である。

2019年7月10日、ちくまプリマ―新書、860円。

posted by 松村正直 at 21:50| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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