2019年12月10日

『闘う文豪とナチス・ドイツ』の続き

この本は「トーマス・マン日記」に出てくる多くの人物の生涯にも触れている。

ノルウェーのファシズム政権に協力して戦後は罪に問われたノーベル賞作家クヌート・ハムスン、第二次大戦中に単独イギリスへ渡り戦後は93歳まで生きて刑務所で自殺したナチスの元副総統ルドルフ・ヘス、再婚した若い妻と1942年にブラジルで自殺した作家シュテファン・ツヴァイク、白バラ運動のメンバーで逮捕後わずか四日で処刑されたハンス・ショル、ゾフィー・ショル兄妹、トーマス・マンの長男で1949年に自殺した作家のクラウス・マン。

年齢も立場もそれぞれであるが、ナチス政権下に生きた彼らの行動をトーマス・マンは細かく記述している。

反ナチスの姿勢を貫き、戦争中も一貫して反ファシズムの立場を堅持したトーマス・マンは、現在の目から見ても非の打ちどころのない選択をしたと言っていい。しかし、その「正しさ」は晩年の彼を苦しめることにもなった。

戦後のドイツにおいて亡命者トーマス・マンは受け入れられなかった。戦時下のドイツの悲惨な状況とは無縁な国外生活を送った彼に対する風当たりは強く、ナチスへの協力者の処罰を求めるマンの意見は反発を招くばかりだったのだ。

何と皮肉なことであろうか。

posted by 松村正直 at 07:06| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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