関東大震災後の混乱の中で虐殺された大杉栄と伊藤野枝の四女で市民活動家の伊藤ルイ(本名ルイズ、戸籍名留意子)の生い立ちから1976年(54歳)までの人生を描いたノンフィクション。第4回講談社ノンフィクション賞受賞作。
松下竜一の作品は、デビュー作の『豆腐屋の四季』から数々の社会派ノンフィクション、そして「松下センセ」もののエッセイまで数多く読んできたが、この本は何となく遠ざけて未読であった。
今回手にしたのは、青年団の公演「走りながら眠れ」を見て、大杉と伊藤の二人に興味を持ったからである。
http://matsutanka.seesaa.net/article/470789840.html
野枝がまことを出産したのが十九歳のときで、最後のネストルを生んだときが二十八歳であるから、十年間に七人の子を生んだことになり、「野枝はいつも乳くさかった」と同志たちに記憶されたのも、むりはない。そして、その十年間に全集二巻の分量に達する文章を書き残した(・・・)
著者の取材力と文章力には毎回敬服させられる。伊藤ルイ1996年に、松下竜一も2004年に既に亡くなっているが、この本の中では今も元気に生き続けている。
1982年3月10日、講談社、1200円。
先週、授業でダム建設問題を取り上げたので、『砦に拠る』を紹介したところ。
松下竜一は、反公害運動とも深くかかわっていたので、あらためて資料を読みたいと思っている。
ところで、蜂の巣城の室原さんの資料が、関西大学に室原文庫として保管されているらしく、それをいつか見たいと思っている。http://opac.lib.kansai-u.ac.jp/?page_id=17239