2019年11月08日

川野里子著 『葛原妙子』


コレクションの日本歌人選70。
副題は「見るために閉ざす目」。

むかしにて癌ありとせばかなしからむたとへばかのモナ・リザと癌
              『薔薇窓』
いつしんに樹を下りゐる蟻のむれさびしき、縱列は横列より
              『原牛』
胎兒は勾玉なせる形して風吹く秋の日發眼せり
              『葡萄木立』
K死病の死屍をのせゆく喪の舟としてゴンドラはKく塗られき
              『朱靈』
白色(セルリーアン) 白色(セルリーアン) とぞ朝顏はをとめ子のごと空にのぼりぬ
              『をがたま』

4首目はヴェネツィアを訪れた際の旅行詠。ペスト(黒死病)が大流行した中世のヴェネツィア。ゴンドラで死体が運ばれた事実はあったようだが、そのために船体が黒く塗られたというのは葛原のイメージか。ゴンドラの傍らに死者がいるかのような生々しさを感じる。

2019年7月25日、笠間書院、1300円。


posted by 松村正直 at 08:28| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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