2019年11月04日

水原紫苑著 『春日井建』


コレクション日本歌人選73。
副題は「「若い定家」は鮮やかにそののちを生きた」。

火祭りの輪を抜けきたる青年は霊を吐きしか死顔をもてり
               『未青年』
海の辺のテラスの裸像石なれば年経て若し沖を望める
               『青葦』
鴨のゐる春の水際へ風にさへつまづく母をともなひて行く
               『白雨』
失ひて何程の身ぞさは思へいのちの乞食(こつじき)は岩盤に
伏す             『井泉』
一羽づつみづからの輪の芯となり輪唱の音を聴きゐるごとし
               『朝の水』

4首目はガン治療に効果があると言われる玉川温泉で岩盤浴をしている場面。自らを「いのちの乞食」と呼ぶところに凄みがある。

2019年7月25日、笠間書院、1300円。

posted by 松村正直 at 23:09| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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