2019年11月02日

佐佐木頼綱著 『佐佐木信綱』


コレクション日本歌人選69。
副題は「「愛づる心」に歌の本質を求めた大歌人」。

佐佐木信綱の短歌50首を取り上げて鑑賞・解説した本。

幼きは幼きどちのものがたり葡萄のかげに月かたぶきぬ
              『思草』

「輸入文学の雰囲気と和歌の型とが合わせられた意欲的な作」と鑑賞にある。なるほど、結句は古典的だが、「葡萄」と「月」の取り合わせには西洋的な新しさを感じる。

まがね鎔(と)け炎の滝のなだれ落つる溶炉(ようろ)のもとにうたふ恋唄
              『新月』

明治38年に足尾の溶鉱炉を見学した際の歌とのこと。溶鉱炉と言うと宮柊二や佐藤佐太郎の歌が思い浮かぶが、こんなに早い時期から詠まれていたのだ。

はしるはしる地上のもの皆走る走れ走れ走れ走りやまずあれ
              『鶯』

「モダニズム短歌の影響も感じるが、信綱は当時既に六十歳」とある。このパワーはすごい。爆風スランプの「Runner」みたいだ。

2019年5月25日、笠間書院、1300円。


posted by 松村正直 at 21:03| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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