2019年10月21日

宮城公博著 『外道クライマー』


2016年に集英社インターナショナルより刊行された本の文庫化。

アルパインクライマー(岩壁・氷壁登攀家)であり、沢ヤ(沢登り偏愛家)でもある著者が、自らの旅の記録を綴った本。46日間におよぶタイのジャングルの沢登り、称名廊下や台湾のチャーカンシーなどのゴルジュ(両岸が切り立った水路)遡行、冬の称名滝やハンノキ滝登攀など、過酷な冒険ばかりだ。

冒頭は2012年7月に「那智の滝」でロッククライミングして逮捕された事件から始まる。それをきっかけに、著者は7年間勤めた会社を辞めることになった。

「ナメちゃん、いったいどうやって遠征費、やりくりしてんの?」
山仲間からよく聞かれる。当然、スポンサーなどいない。日雇い労働と、山岳雑誌にちょいちょい書いているぐらいで、年収一五〇万ちょっとといったところだった。

それでも著者を危険な場所へと向かわせるのは、文明の利便性や社会の枠組みを離れて自身を極限まで試し、確かめたいという欲望なのだろう。

装備や技術が未発達な四〇〜五〇年前ならいざ知らず、今の時代に生きる登山者は自然に対してもっとフェアであるべきなのだ。
山に自殺しに行くわけではないが、生と死の境界線に立つことによって生の実感が湧く。

社会不適合者を自認する著者の文章は時に下品で露悪的だが、その一方で過酷な体験に裏打ちされた揺るぎなさもあるように感じる。

2019年3月25日、集英社文庫、850円。

posted by 松村正直 at 08:41| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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