2019年10月13日

小池光歌集 『梨の花』

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2014年から17年までの作品を収めた第10歌集。

息つめて引き抜きにけりしろがねのかがやきもてる鼻毛いつぽん
ピラカンサの赤実を夕日照らすとき癌に倒れし島倉千代子
つかむ手のひとつとてなき吊り革が利根川わたる電車に揺るる
自転車のパンクを直す方法は昔もいまもかはらずにあり
死のきはの猫が嚙みたる指の傷四十日経てあはれなほりぬ
あんぱんの臍(へそ)を発明したる人円満なる晩年を送りたりけむ
なにがなし眼光弱くなりたりしバラク・オバマをおもふ寒の夜
逃げ出ししチンパンジーが三時間後に捕へられ春の日暮れぬ
子なきゆゑ生にさほどの執着なしとぽつりと言ひし吾子をかなしむ
冷蔵庫の野菜庫にありてナノハナがいくつかの花つけたりけふは

1首目、鼻毛が神々しいもののように詠まれている。
2首目、「ピラカンサ」と「島倉千代子」の取り合わせ。
3首目、空いた電車に吊り革がぶらぶら揺れている。
4首目、時代が進歩しても修理方法は原始的なまま。
5首目、傷痕が無くなってしまうのを寂しく思うのだ。
6首目、「あんぱん」と「円満」の音や形が重なり合う。
7首目、大統領に当選した頃のオバマ氏は眼に力があった。
8首目、自由気ままな暮らしはわずか3時間で終了。
9首目、特に深い意味はなかったのだろうが親としては辛い。
10首目、こんなところで黄色い花を咲かせてという驚き。

2019年9月14日、現代短歌社、3000円。


posted by 松村正直 at 22:25| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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