2019年08月20日
松本仁一著 『国家を食べる』
朝日新聞社で中東アフリカ総局長などを務めた著者が、中東やアフリカなどの食べ物を通じて、その土地に暮らす人々の姿や国家の状況を描き出したノンフィクション。新潮社の「Webでも考える人」に2018年5月から12月にかけて連載された文章が元になっている。
収録されているのは「チグリス川の鯉―イラク」「昼食はパパイヤだけです―ソマリア」「ブドウの葉ご飯と王様―ヨルダン」「インジェラは辛くてつらい―エチオピア」「最高のフーフー―ガーナ」など計15篇。
ジャーナリストの書いた文章だけあって、イラク戦争、中東和平交渉、ソマリア内戦、アラブの春、西サハラ問題などを取材した話やその後の経過などが詳しく記されており、歴史の舞台裏を知ることができる。
タイトルには「国家」とあるけれど、著者は大袈裟な書き方はしない。取材で出会った人物や食べ物の話をもとに国や地域の問題を考えていく。そうした視点が徹底していて、とても面白い一冊であった。
2019年7月20日、新潮新書、780円。
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