かきくらし雪ふりしきり降りしづみ我は真実を生きたかりけり
『Vorfruhling』
は、実は「アララギ」の選歌に落ちた歌であった。
『詩と真実』の中で高安は次のように書いている。
医科志望を変更して文科に入ろうというころの嘆きをうたった一連の最初の歌である。(・・・)アララギに投稿して発表されたときにはこの歌は選にもれていた。選者の意図はどうだったのか聞いたことがないが、のちに歌集にまとめるときには勝手にこれを巻頭に置くことにした。
本人にとっては文学的出発点として欠くことのできない歌であり、自信もある歌だったのだろう。この一首を歌集に収めたことは、結果的に非常に大きな意味を持つ判断であったと思う。