イスラム・エスノグラファーの著者が、イランを20日間、ひとりで旅した記録。ヤズド、メイマンド、シルジャン、シーラーズ、ヤスジ、ホラマバード、サナンダージなど、聞いたことのない町の名前が次々と出てくる。(というか、知っている地名がテヘランくらいしかないのだが)
著者の旅はホテルに泊まって外食するのではなく、個人の家に泊まって「家めし」をご馳走になることが多い。バスで乗り合わせた人や道を訊いた人に、しばしば家に招かれる流れになる。イラン人の生の暮らしぶりがうかがえる内容だ。
イラン人の家に招かれて、とにかく驚くのはその広さだ。
イラン人はとにかく煮込むのが大好きだ。
イランでは男女とも整形手術が盛んで、鼻を「低く」する手術が多い。
イラン人は「ペルシャ帝国の末裔」のプライドが高く、「自分たちはアラブとは違う」という意識が強い。
イラン人は米好きだ。イランの場合ピクニックといえば、「米」なのである。
イランと言えば、最近は核合意が崩れてホルムズ海峡に緊張がといったニュースばかりが流れる。けれども、そこに住む人々のことはほとんど知られていない。そうした意味でも、非常に面白い一冊であった。
2019年4月25日、産業編集センター、1100円。
記事に書いてくださったとおり、日本ではイランの普通の暮らしというのが、ほとんど報道されません。
おせっかいで温かい人たちのことを、もっと知ってもらいたいと思っています。
ありがとうございました!!
以前『女ひとり、イスラム旅』を拝読した時にも感じたことですが、テロや戦争といったニュースは耳にしていても、実際にそこに住む人々の姿や暮らしについては、ほとんど知りません。
単なる旅行記とは違って、その土地に住む人々の日常や息遣いが生き生きと伝わってくるところが、常見さんの本の魅力です。現地の人に対して親近感を覚えます。