鯨類研究所、水産庁遠洋水産研究所、東京海洋大学で40年にわたってクジラについての調査・研究を行ってきた著者が、自身の経歴や鯨の生態、IWC(国際捕鯨委員会)の問題などを記した本。
鯨類は鯨目の総称で、このちょっと下の亜目レベルで、ヒゲクジラ亜目(14種)とハクジラ亜目(75種)に分かれる。これらの亜目は(・・・)同じ「クジラ」とついてはいるが、ゾウとライオンぐらいかけ離れた動物群である。
ヒゲクジラでは体格依存的に大人、つまり性成熟に達する。簡単に言えば、ある体格(体長)になると大人になるわけだ。栄養状態が良くなるにつれ、この体長に到達する時間が早くなる。だから、大人になる年齢がだんだん若くなる。
こういう記述を読むと、自分がクジラについてこれまであまり詳しく知らなかったとあらためて思う。
日本は今年6月にIWC(国際捕鯨委員会)を脱退し、7月から商業捕鯨を再開した。その背景には捕鯨国と反捕鯨国の長年にわたる争いや行き詰まりがある。
IWCからの脱退と再加盟を繰り返した他国の例は幾多もある。個人的な切望であるが、IWCに変貌の兆しが見えた時には、是非再加盟を検討してほしい。
IWCの科学委員会のメンバーとして尽力してきた著者の何とも複雑な思いが滲む文章だ。
2019年5月30日、光文社新書、840円。