2019年07月11日

大口玲子歌集 『ザベリオ』

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392首を収めた第6歌集。

毀誉褒貶われにもあらむこの秋の永井隆を知る人の声
「もう一つの手と足見つかりますやうに」河童のために子は祈りたり
文鳥のブローチつけて来たることに言及されて灯れるごとし
手袋を買ひしきつねの子のはなし聞きて眠りぬ人間の子は
朝ふたつ夜にひとつの日向夏食べて息子は臍出し眠る
「8地獄共通観覧券」買ひて二つの地獄行き残したり
聖劇の羊飼ひたちは出番待ちたまごのサンドイッチをかじる
銃眼から光さしこむトーチカの内部にいかなる言葉ありけむ
かの日きみに心は組み敷かれたるまま生きて月照る野を歩みゆく
六人中三位でゴールしたる子の望外のよろこびを遠く見つ

1首目、どんな人のことでも良く言う人もあれば悪く言う人もある。
2首目、河童の手足の展示を見て。子どもは時に思い掛けないことを言う。
3首目、ブローチに気づいてもらえて嬉しかったのだ。
4首目、新見南吉『手袋を買いに』の読み聞かせ。「人間の子」がいい。
5首目、結句の「臍出し」が面白い。日向夏みたいなお腹。
6首目、別府の地獄めぐり。本当の地獄だったら大変だ。
7首目、舞台裏で簡単な食事をとっている子どもたち。劇と現実の落差。
8首目、沖縄戦のトーチカ。じっと敵を待ち構える兵たちがいた空間だ。
9首目、決して忘れることのできない痛手を負ったのだろう。
10首目、三位で喜ぶ息子に対する何とも複雑な思い。

2019年5月15日、青磁社、2600円。

posted by 松村正直 at 22:08| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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