2019年06月19日

宮本常一著 『辺境を歩いた人々』


2005年に河出書房新社から刊行された本の文庫化。
(親本は1966年、さ・え・ら書房刊)

江戸後期から明治にかけて日本の辺境を旅した4名の人物(近藤富蔵、松浦武四郎、菅江真澄、笹森儀助)を取り上げて、彼らの足跡や業績を記した本。「です・ます」調の子供向けのやさしい文章で書かれている。

難船の荷物をひろいあげると、荷の持主から、一割のお礼がでることになっていました。そのために荷物をひろうことは海にそった村々のいい収入のひとつでした。
いまのようにべんりな郵便制度がない時代ですから、手紙は旅人などにことづけて、とどけてもらうしか方法がなかったのです。だからうまく相手のいる土地へいく人がいないと、一般の人はいつまでたっても手紙は送れなかったわけです。

当時の暮らしに触れたこうした記述に教えられることが多い。さり気なく書かれているけれど、私たちが意外と気付かない部分だろう。

ふりかえってみると、日本の辺地は、こうした国を愛し、また辺地の人々のしあわせをねがう多くの先覚者たちが、自分の苦労をいとわないであるきまわり、しらべ、ひろく一般の人にそのことをうったえて気づかせ、そこにすむ人の上に、明るい光がさしてくるようにつとめてくれたことによってすこしずつよくなって、今日のようにひらけてきたのです。

本の最後に記されたこの一文に、宮本の生涯を貫いた信念がよく表れていると思う。

2018年6月20日、河出文庫、760円。

posted by 松村正直 at 20:31| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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