きのふけふ食べて明日もまた食べむ三本百円の大根のため
岩野伸子
「三本百円」という安さにつられてつい買ってしまった大根。三本と言えばかなりの量なので、食べ切るために毎日大根料理を食べ続けているのだ。
うぐひす餅埋めて抹茶の山々の陰るところと日の差すところ
清水良郎
うぐいす餅には青きな粉や抹茶の粉がかけてある。それを若葉や青葉の山に見立てたのだ。皿に載ったうぐいす餅から感じる初夏の季節が鮮やか。
夫婦には我慢が大事と言う人の口の形が姶良カルデラ
関野裕之
錦江湾や桜島を含む巨大な姶良(あいら)カルデラ。道徳的な話を続ける相手の口もとを皮肉な気分で見ている。結句「姶良カルデラ」が秀逸。
同じドアー並びてをればドアノブにぬひぐるみ吊す女性入居者
尾崎知子
老人施設などの場面。廊下に面して同じドアが並ぶので、自分の居室の目印としてぬいぐるみを吊るしている。それが可愛くもあり、寂しくもある。
ホットケーキの中なる仏 本心とはそもそも存在するのでしょうか
白水ま衣
「ホットケーキ」の中に「ホ」「ト」「ケ」の三文字が入っているという発見。「ホットケーキ」「仏」「本心」と「ほ」の音によって三句以下が導かれている。
真冬にはしろく固まるはちみつの、やさしさはなぜあとからわかる
小田桐夕
三句「はちみつの、」という序詞的なつなぎ方が巧みな歌。相手の優しさに気づいた時には、もう二人の関係が変わり手遅れになっていたのだ。
母にやや厳しい口調のわれだった 旅の写真の見えぬところで
山川仁帆
写真には親子の楽しげな姿だけが写っているのだが、それ以外の場面では口喧嘩になったりもしたのだろう。写真を見ながらそれを悔やんでいる。
先日、「戦争の歌」を拝読しました。
とても読みごたえがあり、考えることの多い1冊でした。
『戦争の歌』お読みいただき、ありがとうございます。
苦労して書いた本なので多くの方に読んでもらえると嬉しいです。
松村さんの読みは心に響くものがあり、いつも楽しみに拝読しているので、思いがけず自分の歌に評をいただいたことに感激しております。
僕も母にきつい言い方をしてしまって後悔することがしばしばです。