2019年05月26日

高橋源一郎著 『日本文学盛衰史』


初出は「群像」1997年5月号から2000年11月号。

明治時代の文学者の数々のエピソードや作品を元に、日本の近代文学がどのようにして誕生したのかを群像劇として描き出した小説。登場する主な人物は、二葉亭四迷、石川啄木、伊良子清白、国木田独歩、田山花袋、夏目漱石、島崎藤村、森鴎外、尾崎紅葉など。

『あひびき』の冒頭二十一行には人間の影は存在しない。ただ、その風景を「見た」証人として「わたし」が微かに現れるだけである。「わたし」は揺らめくように一瞬、その姿を見せ、たちまち消え失せる。そこにはぎりぎりの琢磨された言葉で表現された風景だけが存在している。そこにあるのは自然であろうか、違う。それは「見られた」自然なのである。

明治期と現代を自由に行き来しながら、文体の模索を通じて人間の内面が見出されるにいたった道筋や、そもそも何のために文学が存在するのかといったテーマが追求されている。全598ページの大作。

2001年5月31日、講談社、2500円。

posted by 松村正直 at 23:12| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。