みずからに餌を与える心地して牛丼屋の幅に牛丼を食ぶ
吉川宏志『石蓮花』
吉野家・松屋・すき家など牛丼のチェーン店で牛丼を食べているところ。ゆっくりと味わうのではなく、忙しい時にパパッと食べてさっと店を出る。まるで自分が牛舎の牛になって餌を食べているような気分になったのだろう。
カルチャーセンターでこの歌を紹介したところ受講生の反応が今ひとつだったので、念のため「牛丼屋には行ったことありますか?」と尋ねてみると、ほとんどの方が行ったことがない。これには驚いた。漠然と日本人の9割くらいは行っていると思っていたのだが、そんなことはないらしい。
確かに、カウンター席が中心の牛丼屋で牛丼を食べているのは、男性のサラリーマンや学生が多い。若い女性や家族連れも見かけるが、私より上の世代の女性はあまり見かけない。受講生にはその層が多いので、牛丼屋に入ったことがない人も多いのだ。
自分では当り前だと思っていても実は当り前でないことが世の中にはたくさんある。人と話をしているとそんな気付きがあるので楽しい。
歌会では同じ歌について様々な読み方や意見が出ますね。その幅広さを楽しみながら、良い読みとは何かを考えていきたいと思います。