「私は語彙が少ないんで、思い通りに表現ができません」
「語彙を増やすにはどうすればいいですか?」
といった話をよく耳にする。
でも、短歌を詠むのに本当にそんなに語彙は必要なのだろうか。
もちろん、語彙は多いに越したことはない。
歌集を読んだり新聞を読んだりして知らない言葉に出会ったら辞書を引いてみる。そんなふうに日常的に語彙を増やす努力を大切だ。
その上で言うのだが、例えば語彙が1000から1050に増えたところで、たいして表現力が増したことにはならないだろう。どこまで行っても足し算の世界である。
むしろ大切なのは「言葉の組み合わせ」を増やすことだと思う。
「雨が」=「降る」という主述の組み合わせしか持たない人に対して、雨が「降る」「落ちる」「走る」「駆ける」「飛ぶ」「伸びる」「襲う」「叩く」「舞う」「流れる」・・・と組み合わせを多く持っている人は、何倍もの表現ができる。それは掛け算の世界だ。
簡単な語彙であっても、組み合わせ方によっていくらでも複雑な世界を詠むことができる。「自分の思いを表すのにぴったりの言葉」なんて、たぶん何十万の語彙があったところで見つからない。それは言葉同士の組み合わせを工夫して、自分自身で作り出すしかないのだ。
2019年05月11日
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