副題は「帰れば食うに困らない場所を持つ暮らし方」。
和歌山県の熊野の民家を自分たちで改修してシェアハウスにした2人が、都会と田舎の二拠点居住の良さやこれからの時代の生き方について記した本。「フルサト」は自分の生まれ故郷のことではなく、ふるさと的な安らぎが得られる場所といった意味で使われている。
全体が7章に分かれていて、
第1章 フルサトの見つけかた(pha)
第2章 「住む」をつくる(伊藤)
第3章 「つながり」をつくる(pha)
第4章 「仕事」をつくる(伊藤)
第5章 「文化」をつくる(pha)
第6章 「楽しい」をつくる(伊藤)
第7章 フルサトの良さ(pha)
という構成になっている。真面目な感じの伊藤と緩い感じのphaと、考え方が同じわけではないが、基本的な方向性は一致している。
高齢化したエリアでは、草刈りができる人がいるだけでも貴重である。なんなら日本全国高齢化していくこの時代においては、生きているということだけでどこでも特技になる。(伊藤)
現代人は「で、年収いくら?」みたいな話に注目しがちだが、「で、あなたの自給力はどんぐらい?」と聞く人はいない。ここは今ノーマークである。(伊藤)
現代社会が何かとお金がかかるのは、サービスの交換に中間の人が増えすぎたのが一因だが、直接交換ができればだいぶ交換コストが下がる。(伊藤)
その時自分がいる場所によって思考の内容が変わるということをよく考える。東京にいるときは東京で起きていることが日本の全てのような気がするけど、熊野にいるときは東京のニュースを聞いても「なんか遠くでいろいろやってるらしいな、こっちには関係ないけど」って感じになる(・・・)(pha)
2人の柔軟な思考と自由な姿勢にとても励まされる一冊であった。
(いや、まあ、僕も十分に自由なんですが)
2018年7月10日、ちくま文庫、740円。