2015年にダイヤモンド社から刊行された単行本に加筆修正して文庫化したもの。初出は2007年から2015年までダイヤモンド社のPR誌「経」に連載された「リアル共同幻想論」。
全部で20篇の文章が載っているが、著者が繰り返し語るのはタイトルにもある通り「自衛」が「戦争」につながるという認識である。
戦争とは戦争を憎むことだけでは回避できない。戦争を起こしたいと本気で思う指導者や国家など存在しない。ところが戦争は続いてきた。なぜなら人は不安や恐怖に弱い。集団化して正義や大義に酔いやすい。歴史上ほとんどの戦争は自衛への熱狂から始まっており、平和を願う心が戦争を誘引する。
戦争が起きる仕組みをきちんと理解することが、戦争を起さないためには必要なのだ。近年、北朝鮮や中国、あるいはテロの脅威が盛んに言われ続けている。そんな時こそ「集団化」や「熱狂」から距離を置くことが大事になるのだと思う。
2019年1月16日、講談社文庫、720円。