「サバイバル登山」=「できるだけ自分の力で山に登ろうとする試み」を続ける著者の書いた実践的な入門書。
全体が「計画を立てる」「装備を調える」「歩く」「火をおこす」「食べる」「眠る」の六章から成り、それぞれ豊富な写真や図解を用いて具体的なやり方を記している。
ヘッドライトやラジオなどの電気製品は持っていかない。携帯電話、GPSはいわずもがな。時計もテントもストーブ(コンロ)も持たず、食料は米と調味料だけ。
夏はイワナを釣り、冬は鹿を撃ち、他には山菜やキノコなどを採って食料とする。そうした過酷とも思える登山を行う根本に「山だけではなく、自分自身を深く体験する」という著者の哲学がある。
登山の自由には道に迷う自由も含まれているのである。
「食べる」とは、自分以外の生物(植物も含む)の一部もしくは全部を身体に入れることである。消化してエネルギーにしたり、肉体にしたりする。ある意味、完全な融合だ。そこにリスクがあるのはあたりまえ。
狩猟行為は大きく三つのことから成り立っている。「出会う、仕留める、解体する」の三つである。なかでも「出会う」までが不確定要素にあふれた狩猟の中心をなす部分であり、時間も労力もほとんどがそこに注がれる。
「なんとなくやばい気がする」とか「なんとなくいい感じ」なんていうときの「なんとなく」は大事にしたほうがいい。
僕自身は山登りも狩猟もしないし、今後もたぶんしないと思うけれど、こういう著者の考え方や姿勢には深く惹かれるものがある。
2014年12月5日、デコ、2900円。