全国各地のドライブインを訪ねて、その店の歴史や経営する家族の物語を描いたノンフィクション。ドライブインの移り変わりを通じて、日本の戦後という時代が鮮やかに浮かび上がってくる。
ドライブインが急増した背景には車の普及がある。自家用車の世帯普及率がわずか二・八パーセントに過ぎなかった一九六一年、『マイ・カー よい車わるい車を見破る法』という本がベストセラーとなる。その五年後には自家用車の世帯普及率は一〇パーセントを超え、一気に日本全土に普及してゆく。
ドライブインが担っていた役割というのは、かつて宿場町が担っていた役割に近いのではないか。
登場するのは、「直別・ミッキーハウスドライブイン」「阿蘇・城山ドライブイン」「本部町・ドライブインレストランハワイ」「能登・ロードパーク女の浦」「千葉・なぎさドライブイン」「岩手・レストハウスうしお」など20店あまり。店ごとに気候風土や立地条件なども違う。
料理が運ばれてくると、運転手はコミックを脇に置いて食事を始めた。ごはんを頰張る音がする。ごはんを頰張ることにも音があるのだなと思う。
「雪は迷惑以外の何物でもないですよ。(・・・)ただ、雪が降らないと降らないで困ることもある。雪が降れば除雪車が出動して、それでお金が入る人もいるんです。それで財布が潤って、うちでお金を使ってくれる。」
著者は2011年にドライブイン巡りを始めて200軒近い店に行き、取材対象の店は少なくとも三回は訪れている。しかも、2017年には自ら「月刊ドライブイン」というリトルプレスを創刊し、そこに連載した文章が今回一冊の本となったのだ。その熱意に圧倒される。
ノンフィクションには、こうした「熱意」が欠かせないと思う。
2019年1月30日、筑摩書房、1700円。