監修:岩城之徳、編集:遊座昭吾・近藤典彦。
20年以上前の本だが、写真資料が豊富で今でも役に立つ。
自己の真実直視の苦闘、これは当時にあっては自然主義の文学的営為であった。しかし啄木にあっては、それを前述したごとく小説執筆において行なうことは不可能であった。啄木は日記において期せずしてその自然主義的営為を行なったのである。
近藤典彦「北海道・東京時代の啄木」
(『ローマ字日記』)なぜ、ここまで率直な内面告白がこの時期にだけ、ローマ字で行われたか、ということが問題になる。答えとしては、近年、池田功の出した説がおそらく最も的を射ている。要するに、啄木はここで、徹底して自己をえぐる一首の私小説を試みているのであって、これは単なる日記ではなく、独立した一つの作品だ、というのである。 今井泰子「石川啄木名作事典」
啄木の小説・日記・短歌の関わりを考える上で非常に興味深い指摘だ。
1992年11月1日、思文閣出版、2000円。