2019年03月21日

竹内洋著 『立志・苦学・出世』


1991年に講談社現代新書より刊行された本の文庫化。
副題は「受験生の社会史」。

受験は今でも人生の進路を左右する大きな出来事であるが、それがいつの時代から始まり、どのように移り変わってきたかをまとめた本。受験の制度だけでなく、受験生の暮らしや心理を深く掘り下げているのが特徴だ。

昭和十七年に軍国主義のあおりで歐文社という社名は現在の旺文社に変更される
明治以降の勉強立身は学歴/上昇運動である。したがって勉強立身価値は、「階層」移動だけでなく上京という「地理的」移動を含むセンスである。

受験に関して、著者は歴史を三つに区分する。

・前受験の時代(明治30年代半ばまで)
・受験のモダン(〜昭和40年代まで)
・受験のポストモダン(昭和40年代〜)

この本を読んでよくわかったのだが、明治20年代と30年代では受験の様相が大きく異なる。「明治時代」を漠然と一括りに考えていたのだが、啄木の学歴について考える大きなヒントをもらった。

また、受験に関する限り、戦前と戦後という区分も実はあまり大きなものではない。この点も、私たちの漠然とした印象を覆すものであろう。

2015年9月10日、講談社学術文庫、800円。

posted by 松村正直 at 10:55| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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