「歌人入門」シリーズの一冊。
北原白秋(多磨)―宮柊二(コスモス)の系譜を継ぐ著者が、白秋の短歌100首を取り上げて鑑賞・解説した本。
一首につき250字と短い分量ながら、歌の魅力や特徴を的確に解き明かすだけでなく、時代背景や白秋の人生も要領よく描き出している。
「な鳴きそ鳴きそ」は江戸期の端唄(はうた)から採ったフレーズで、「鳴くな鳴くな」の意。
一首の中に隠れている「シ、ス、ス、サ、サ、ソ、シ」という七個のサ行音の響きが、歌に清新さを付与している。
それぞれ「春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと外(と)の面(も)の草に日の入る夕べ」「ヒヤシンス薄紫に咲きにけりはじめて心顫ひそめし日」の鑑賞の一部だが、大事な指摘と言っていいだろう。
白秋短歌のエッセンスが詰まった一冊である。
2018年5月25日、ふらんす堂、1700円。