2019年02月21日

凌雲閣

 浅草の凌雲閣(りょううんかく)のいただきに
 腕組みし日の
 長き日記(にき)かな
             石川啄木『一握の砂』

凌雲閣は1890年に竣工した12階建ての展望塔で、高さは52メートル。当時、日本一の高さを誇る建物であった。別名「十二階」と呼ばれることもある。

観光名所として人気を集めた建物であったが、1923年の関東大震災で上部が崩落し、その後、解体された。

『一握の砂』の序文を書いた渋川玄耳の『藪野椋十日本見物』(1910年)という旅行案内を読んでいたら、この凌雲閣の話が出てきた。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/762983

凌雲閣!なる程丁度十二階ある。一体何の為に建てたものぢやらうか、滅法に高いものぢや。少し歪んで居る様ぢや。筋金が打つてある。是は険呑ぢや。彼(あ)れが崩れたら其麼(どんな)ぢやらう、考へて見てもゾツとする。流石に東京者は胆が据つて居る哩(わい)、彼(あ)の危険物を取払はせずに、平気で其近所に住んで居るのは。尤も博覧会は東京に雨が降らぬものとして建てた相ぢやから、此十二階も地震の無い国の積ぢやったらう。

最後の「此十二階も地震の無い国の積ぢやつたらう」は、13年後の地震による崩壊を予言したかのような一文ではないか。

渋川玄耳、すごい!

posted by 松村正直 at 15:39| Comment(2) | 石川啄木 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
浅草十二階は、映画『帝都物語』で一瞬でしたが崩壊するシーンが鮮烈に印象に残っています。あれこれ画像検索をしていて、どうしても古絵葉書の現物が欲しくなり、昨日大阪梅田の阪急古書のまちに行って1枚見つけ、購入してきました。
その古書のまちから目と鼻の先に、かつて浅草と同じ名前の「凌雲閣」という展望塔があったことを思い出し、その足で跡地に建てられた石碑を見てきました。こちらは木造でキタの九階と呼ばれていたようですね。失われた風景はいとおしいです。
Posted by 小竹 哲 at 2019年02月25日 14:09
大阪の凌雲閣は写真で見るとピラミッドみたいな面白い形をしていますね。今も京都タワーや通天閣や神戸ポートタワーなどがあって、人間は高い所から景色を眺めるのが好きなのだなと思いました。
Posted by 松村正直 at 2019年02月27日 19:52
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