一頁一首組で163首を収めた第3歌集。
不安定な温(ぬく)い血のなかちょこれいと暗くつやめく小雨の夜に
枝ふとく春夜をはしる絶叫をあやうく封じ込めて静寂
池に降る三月の雨、穏やかな水紋としてかつていた人
暗闇の結び目として球体の林檎数個がほどけずにある
夕ぐれの緋(あか)い粒子に浸されたバスの車内の影は盛りたつ
五指の間に五指をうずめる 薄らかな光ちらばる夜の市街地
うす紅の空の底部を擦りつつ車のひかり街をつらぬく
1首目、「ちょこれいと」のひらがな表記が印象的。
3首目、池の面の水紋を見て去った人を思い出している。
5首目、夕焼けの赤さと陰影だけになった車内の光景。
7首目、垂れ込める空へとのびる車のヘッドライトか。
2018年5月25日、角川書店、2600円。