渡邉裕美子著『藤原俊成』(笠間書院、コレクション日本歌人選63)の表紙には
夕されば野辺の秋風身にしみて鶉鳴くなり深草の里
が印刷されている。出典は『千載集』。
本文の鑑賞を読むと
あるとき俊恵に、「あなた自身が一番の代表歌と思う歌はどれですか」と尋ねられて、俊成が挙げたのがこの歌である。
と書かれている。俊成の自信作だったのだろう。
ちなみに、私が住んでいるのは「京都市伏見区深草」。まさに、この歌で詠まれた「深草の里」である。地元には深草うずらの「吉兆くん」というゆるキャラもいる。
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とは言え、別に近所に鶉が飛んでいるわけではない。鶉と聞いても中華丼に載っている「うずらの卵」を思い浮かべるばかり。
「京都府レッドデータブック2015」を見ると、鶉は「絶滅寸前種」に区分されていて、「近年生息数が減少しており、府内ではごくまれに観察されるにすぎない」とある。ちょっと寂しい。
私は出だしが百人一首→古今集なので、歌語や歌枕を見ると、つい反応してしまいます。
しかしながら、私もリアルの鶉の声は聴いたことがありません。ベートーヴェンの『田園』の第2楽章の最後に、高音のオーボエがウズラの鳴き声を模倣するフレーズが出てきますが、聴き様によっては「吉兆、ご吉兆」と聴こえなくもないかも(俊成の情趣と違い、ずいぶん明るいですが)。
それでは本年もどうぞよろしくお願い致します。
ナイチンゲール、ウズラ、カッコウが鳴き交わす様子になっているのですね。初めて知りました。楽しかったです。