無職歴ベテランの兄新米のわたしと家の猫を取り合う
片づけたところに兄が置いていく手塚治虫を二十六冊
「天国に行くよ」と兄が猫に言う 無職は本当に黙ってて
山川藍『いらっしゃい』
二十数年ともに暮らしし弟の恋を知らざり知らざれど兄
妙な語呂合わせのせいで弟の結婚記念日忘れられない
沈黙をチャイルドシートに座らせてわが弟は戻り来たりぬ
辻聡之『あしたの孵化』
おとうとのあとに検索開いたら「水を恐れる 前世」の履歴
おとうとの恋を知らない このばかはスイカの白いとこまで食べて
おとうとは電話に出られるようになりそれはちいさな存在証明
西村曜『コンビニに生まれかわってしまっても』
それぞれ、けっこうな存在感を持って歌集のなかに登場してくる。
この距離感の近さはどういうことなんだろう。気になる。