2018年09月30日

西村曜歌集 『コンビニに生まれかわってしまっても』


新鋭短歌シリーズ41。
「未来」所属の作者の第1歌集。

ポケットティッシュ受け取り礼を言われてるこの世がますますわからなくなる
暴動のニュースを消せば暴動は消える僕らの手のひらのうえ
持ってません温めません付けません要りませんいえ泣いていません
バラ園にバラ石鹼の香の満ちて世界はなんて深い浴槽
だったんだだったんだと行く鈍行で俺はあなたがすきだったんだ
玉入れの〈入れ〉を支えてくれたひと背なにあたまに玉を浴びつつ
「一ポンデあげる」ときみがちぎってるポン・デ・リングのたまの一つぶ
コンビニが逆に売り出す塩むすび僕はふつうに選ばなかった
マトリョーシカ、リョーシカ、リョシカ。だんだんと内緒話のように小さく
「欠席」を丸で囲むと消えていく明日のわたしの小さな椅子は

2首目、スマホの画面で見ている外国のニュース。
3首目、コンビニのレジの店員とのやり取り。「ポイントカードはお持ちですか?」「お弁当は温めますか?」「お箸はお付けしますか?」など。
5首目、「だったんだ」を電車の音のオノマトペとして使っている。
7首目、全部で8つの玉がある。「ポンデ」を単位のように扱う面白さ。
10首目、出欠の返信を出す場面。自分の存在が消えていくような寂しさ。

2018年8月11日、書肆侃侃房、1700円。

posted by 松村正直 at 16:20| Comment(0) | 歌集・歌書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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