2018年09月17日
老いの歌
短歌雑誌には老いを詠んだ歌が無数にある。
高齢化が進んだ現代、歌の世界においても「老いの歌」は非常に大きなウェイトを占めている。
と言っても、魅力や味わいのある「老いの歌」が多いかと言えばそうでもない。単なる愚痴や嘆きにとどまって、読んでももの足りない歌の方が圧倒的に多い。
けれども、雨宮雅子『水の花』や橋本喜典『行きて帰る』といった優れた歌集を読めば、「老いの歌」が大きな可能性を秘めていることがよくわかる。
それは老いが、生と死のギリギリのせめぎ合いを私たちに見せてくれるからだろう。それは逃げることも避けることもできない現実である。そうした現実に直面し、突き詰めて考えていく中で、優れた歌が生まれているのである。
これは、老いの一つの特権と言ってもいいように思う。
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