2018年09月06日
関川夏央・谷口ジロー著 『かの蒼空に』
「坊ちゃんの時代」第三部。
明治42年の東京を舞台に、石川啄木の日々の暮らしを描いたコミック。啄木の日記の記述をベースに、金田一京助、夏目漱石、森田草平、幸徳秋水、管野須賀子、北原白秋、平塚明子、長沼智恵子、森鴎外といった多くの登場人物を織り交ぜ、明治期の群像劇として描き出している。
当時の貨幣価値が現在のどれくらいに相当するのかという問題は、何によって比較するかで随分と違ってきて難しいのだが、関川は「当時の一円は現在の五千円の実力があるのではないか」と書いている。これは啄木の月給や借金の額を考える際に参考になる数字だろう。
他にも、啄木が住んだ「蓋平館」は「主人が日露戦争に出征し、蓋平の戦場で手柄を立てたことから命名した」という話など、初めて知ることがあって面白かった。
1992年1月12日、双葉社、1200円。
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