イエスは三十四にて果てにき乾葡萄噛みつつ苦くおもふその
年齒(とし) 塚本邦雄『装飾楽句』(1956:作品社)
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鑑賞文に「この苦さは、自分がその年齢を追いこしてしまうことへの苦さだろうか。」とあるのは、まさにその通りだと思う。1920年生まれの塚本の年齢を考えると、おそらくこの歌を詠んだ時に34歳だったのだろう。イエスの享年と自分の年齢を比べて、焦燥感のようなものを感じているのである。
そして、この鑑賞文が強く私の印象に残ったのは、書き手の平岡さん自身も34歳なのだろうと思ったからである。どこにもそんなことは書いていないが、きっとそうに違いない。こんなふうに、書いていないことが通じるというのも言葉の力だと思う。