2018年08月31日

34歳

砂子屋書房HPの「日々のクオリア」で平岡直子さんが塚本邦雄の歌を取り上げている。

 イエスは三十四にて果てにき乾葡萄噛みつつ苦くおもふその
 年齒(とし)       塚本邦雄『装飾楽句』(1956:作品社)

https://sunagoya.com/tanka/?p=19168

鑑賞文に「この苦さは、自分がその年齢を追いこしてしまうことへの苦さだろうか。」とあるのは、まさにその通りだと思う。1920年生まれの塚本の年齢を考えると、おそらくこの歌を詠んだ時に34歳だったのだろう。イエスの享年と自分の年齢を比べて、焦燥感のようなものを感じているのである。

そして、この鑑賞文が強く私の印象に残ったのは、書き手の平岡さん自身も34歳なのだろうと思ったからである。どこにもそんなことは書いていないが、きっとそうに違いない。こんなふうに、書いていないことが通じるというのも言葉の力だと思う。

posted by 松村正直 at 11:30| Comment(0) | メモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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