副題は「鵺の正体、鬼の真実」。
著者の提唱する妖怪古生物学とは、「古生物学的視点で、古い文献に記載されている不思議な生物や怪異の記載を読み解く」というもの。妖怪を単なるフィクションとして捉えるのではなく、それが生まれた理由や根拠を古生物学の知見を基に解き明かしていくのだ。
そうした手法によって本書では、ヤマタノオロチ、鵺(ぬえ)、一つ目の妖怪、竜骨、雷獣、一つ目一本足の妖怪などの正体に迫っている。
また、本書は西洋科学が導入される近代以前の、江戸時代の日本における本草学(博物学)の水準や足跡を記したものともなっている。
「妖怪」(異獣・異類)は、生類の枠に当てはまる「ヒト」や「畜生」の中において、よくわからない、正体不明のものをすべて放りこんでおく「ゴミ箱分類群」としての役割が非常に大きかったと考える。
他にも「肉食する生き物でツノ付きはいない」とか「前歯と奥歯が異なっていたり、牙があったりするのは、基本的に哺乳類のみ」など、言われてみればなるほどといった豆知識も数多く記されていて楽しい。
2018年7月10日、NHK出版、780円。