歌の解釈がやや道徳的なところが気になったが、いくつか面白い発見もあった。
三味線の弦(いと)のきれしを
火事のごと騒ぐ子ありき
大雪の夜に 『一握の砂』
この歌について、著者は「三味線の一の糸が切れると縁起が良いといわれる。釧路の料亭での出来事の一つに、啄木は心弾ませたことであろう」と書いている。
これだけでは、どのように縁起が良いのかはっきりしないのだが、ネットで調べてみると「二の糸が切れたら身請けがつく」といった俗信があるらしい。料亭で三味線を弾いている芸者にとって、身請けの話は何より嬉しいことだったろう。だからこそ、ただの俗信とはいえ「火事のごと騒ぐ」となったわけだ。
2010年2月20日(睦月)、2010年3月1日(皐月、長月)
各300円、盛岡出版コミュニティー。