2014年4月から半年間、京都新聞に連載した「一歩先のあなたへ」をもとに、大幅に加筆してまとめた一冊。
現代の大学教育や教育制度のあり方、学生・若者の気質、社会的な問題、言葉や会話・コミュニケーションなど、様々な実例を挙げながら、人が生きていく上で大切な「知」とは何かを論じている。
高校までの問題にはかならず一つ、正解があったのに対し、これからの社会においては、そもそも正解というものがないのだということを、大学における「学問」の基本要件としてまず学生に知らせたいと思うのである。
実は子どもがひ弱でも、親離れができないのでもなく、親の子離れができないことこそが、最大の問題なのかもしれない。
失敗の芽をあらかじめ摘んでしまうことは、成功への道を閉ざす以外のなにものでもない。失敗体験こそが、次に同様の問題に直面したときに成功へと導く必須の布石なのである。
心から愛することのできる人を得ることは、すなわち自分のもっともいい部分を発見することなのである。
この本の根底にあるのは、社会の現状に対する永田さんの苛立ちや不満である。「気に食わない」「胡散臭さを感じる」「危機的状況」「違和感を持たざるを得ない」「怖いことである」「なんともハヤと言うしかない」「やれやれである」「じれったい」「嫌いでもある」といった強い言い回しが(ユーモアも交えつつではあるが)頻出する。
近年の永田さんの政治に対する積極的な発言も、こうした流れの延長線上にあると言っていいだろう。
全体に文章もわかりやすく、言いたいことが真っ直ぐに伝わってくる良書だと思う。ただ、もちろん「親父の小言」的な側面はあるので、十代二十代の人たちに素直な気持ちで読んでもらえるかどうかは、ちょっとわからない。
2018年5月20日、新潮新書、760円。