函館市文学館で購入した本。
啄木研究において定説とされていることが本当に正しいのか、いくつかのトピックを挙げて論じている。
・「ローマ字日記」私見
・「東海の歌」の定説をめぐって
・啄木と橘智恵子の場合
・詩への転換とその前後
・「不愉快な事件」と「覚書」について
・詩集「あこがれ」発刊について
・啄木負債の実額について
・啄木敗残の帰郷
・啄木釧路からの脱出とその主因
・金田一氏の文章論争
・「手が白く」の歌のモデル
・啄木筆跡の真偽について
こうして目次を並べただけでも、啄木に関する研究には長年にわたる蓄積があり、様々な議論が行われていることがわかるだろう。
私が一番注目したのは、啄木の「ローマ字日記」についての著者の見解である。
私は日記形式を採用して自然主義的私小説を意図したのではないかと考えるのである。
つまり、他の日記類とは違って、「ローマ字日記」は小説だというのだ。確かに表記だけでなく文体や内容についても「ローマ字日記」は異色である。
従来は「日記ではあるが文学的な価値も高い」といった評価をされてきた「ローマ字日記」であるが、これを「小説」と捉えるとずいぶん見え方が違ってくるように思う。
2009年1月1日、そうぶん社出版、800円。