「塔」7月号で、第8回塔短歌会賞・塔新人賞が発表になった。
塔新人賞は、近藤真啓「『Lao-tse』を読む」。
レガッタのオールが揃ひて水を掻く春よ春よと誘ふやうに
雄・雌を0号絵筆で選り分けるサマータイムの始まる朝に
「maybeが好きね」と言はれ「maybe」と答ふ フランチェスカの
栗色の髪
ボストンに留学して研究する日々を詠んだ一連。
1首目、下句の比喩が伸びやかで気持ちいい。
2首目、実験用の蠅を細い筆を使って分けているところ。
3首目、日本人らしさが滲み出ている。
塔短歌会賞は、白水ま衣「灰色の花」。
行きましょう。と即答できず逸らしたる目線の先に鴎、降り立つ
抽象でも具象でもありうるのだとスタールが描くパン、その光
回想をするとき眼鏡をかける人、はずす人、目を閉じる人あり
画家二コラ・ド・スタールの絵を題材に、自らの感情や思考を描いた一連。
1首目、相手の誘いにすぐにOKできず迷う心。
2首目、抽象と具象は必ずしも正反対の概念ではないのだ。
3首目、どの方法が一番よく記憶が見えるのだろうか。
「塔」7月号は、受賞作、次席、候補作、受賞のことば、選考座談会など、実に全55ページという分量を「第8回塔短歌会賞・塔新人賞」に割いている。ぜひ、じっくりと読んで欲しい。