オウム真理教の7名の死刑執行を受けて、昨日の朝日新聞の朝刊に森達也さんがコメントを載せていた。
地下鉄サリン事件が起きた1995年、僕はテレビ番組をつくる仕事をしていました。当時大量のオウム特番が放映されましたが、描き方は2種類だけでした。「凶暴凶悪な集団」か「麻原に洗脳された集団」です。
オウム事件で、多くの人々は「普通でまじめに見える人々がなぜ巨大な犯罪をしたのか」という問いを突きつけられ、困惑していたのだと思います。だからこそ、オウムを「凶暴」「洗脳組織」と理解することで、本来の問いに向き合うことを回避していたのではないでしょうか。
こうした構図は今もほとんど変わることがない。
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私は麻原彰晃の講演を一度だけ聴いたことがある。
1991年に大学の学園祭で麻原の講演が行われ、興味半分で聴きに行ったのだ。当時、オウム真理教は衆議院選挙に出たり、マスコミに取り上げられたりと、新興宗教として世間の注目を集めていた。
講演の内容はほとんど覚えていない。
でも、会場との質疑応答で学生たちの様々な質問に答えている姿は印象に残っている。オウムに批判的だったり、セックスについて尋ねたりする質問にもまじめに答えていた。
気さくなおじさんとでも言えばいいのか。おじさんと言っても年齢を計算するとその時の麻原は36歳で、今の私よりはるかに年下であったのだ。
あの時すでにオウムは信者の殺害や坂本弁護士一家殺害事件を起こしていた。そう思うと、何とも複雑な気分になる。