2014年に筑摩書房より刊行された単行本に改訂、削除、追記をほどこして文庫化したもの。
リブロやジュンク堂で40年以上にわたって書店勤務を続けてきた著者が、日本の書店や出版業界の現状を現場の書店員へのインタビューを通じて描き出した一冊。
日本における出版物の総売上高や書店数は90年代後半のピーク時に比べて約6割にまで落ち込んでいる。もう20年近く右肩下がりの状態が続いていて歯止めが利かない。
日本の雑誌はとにかくあらゆるジャンルごとに発行されているのだ、もうそれは世界に類のないことではないかと思う。
児童書には「書店営業の伝統」がまだ生きている、と思ってしまうのは、最近の出版不況から出版社は人件費のどこを削るか、それは営業でしょう、ということになっているようだから。つまり出版社は効率を考えて、これぞという新刊発売時以外は書店回りをしなくなったのだ。
私たちはこういう大切な「マニア・学問の人」、つまり日常的に本が周辺にあるひと、を新興ネット書店・アマゾンに奪われているわけだ。だが、そのお客さんにとってはまことに便利な時代になったのだろう、書店員として認めるのは悲しいけれど。
何か有効な対策があるわけではない。精神論でどうにかなるような状況でもない。書店や本が必要とされない時代が、もう現実に近づいているのだ。
2017年12月10日、ちくま文庫、780円。