編集・評伝:岩城之徳、エッセイ:渡辺淳一。
写真や資料が豊富で、眺めているだけで様々にイメージが膨らむ。
啄木の父は名もない農民の出であったが、母は由緒正しい南部藩士工藤条作常房の娘で、その兄の対月は当時盛岡の名刹龍谷寺の住職で、学僧として誉れ高い人物であったから、啄木も気位高く育てられた。生涯彼を支配した病的なほどの自負心は、実はこうした啄木の生い立ちに根ざすものである。
啄木は上京後森鷗外の知遇を得たが、東京朝日新聞社に入社してからは、その直前に料亭八百勘で起こった朝日の政治部記者村山定恵の鷗外暴行事件のため、鷗外とは自然疎遠となり、(・・・)以後両者の交渉はとぎれている。
この森鷗外暴行事件のことは、この本で初めて知った。
よく知られている話なのだろうか。
1984年2月20日発行、2011年9月25日12刷、新潮社、1200円。