2002年4月から2004年9月まで30回にわたって「歌壇」に連載した文章をまとめた一冊。「春」「われ」「百合」「神」「星」「桜」など24のキーワードを設定して、与謝野晶子の歌の世界を読み解いている。
このキーワードという手法は、かなり効果的だ。晶子について論じる際にはどうしても鉄幹や同世代の歌人たちとの人間ドラマに話が傾いてしまいがちだが、キーワードを中心に据えることによって、言葉や歌の問題に力点が置かれることになる。
おそらく歌のなかに「はつなつ」を詠み入れた歌人は、以上の経緯で考えると、晶子ということになる。
晶子が特徴的に使った「の」の用法もひととおりではない(…)この類の措辞を、晶子は『みだれ髪』よりのちは後退させており、現代短歌にもそのなごりはないといえるだろう。
旧派和歌から新派和歌への変化や晶子の歌の特徴が言葉のレベルで丁寧に分析されており、読み応えのある内容となっている。
2005年4月30日、本阿弥書店、2600円。