青磁社評論シリーズ3。
著者が書き継いできた初期の「明星」や与謝野晶子を中心とした女性歌人についての評論に対談と講演録を加えて、全13篇を収めた評論集。
「明星」は明治33年4月に創刊され、明治41年11月の100号まで続いたが、著者が特に注目するのは明治34年末の第18号までである。西暦で言えばちょうど1900年から、21世紀の始まりの1901年に当たる時期ということになる。
中でも、「明星」に使われている一条成美のカットがミュシャの絵の模写であることを突き止めた文章など、30年前に発表されたものだが今読んでも新鮮である。
山川登美子についての文章も多く収められているが、時に厳しい指摘も見られる。
恋する者が、相手に好ましい人間であろうとして自らを変えて行くのと同じように、登美子は自らの作品を、鉄幹の好むタイプの鋳型へ流し込んで行ったのではあるまいか。「恋ごろも事件」に際して、学校当局の鋳型にはめられることに批判的であった登美子も、所詮は、愛する男性の鋳型には、自ら進んではまり込んで行ったのである。
このあたり、やや筆が滑っている感じがあるのだが、尾崎さんの理想とする女性像がうかがえて、読む方としては注目する。登美子に関しては晩年の歌を高く評価しているようだ。
胸たたき死ねと苛(さいな)む嘴(はし)ぶとの鉛の鳥ぞ空掩ひ来る
わが柩まもる人なく行く野辺のさびしさ見えつ霞たなびく
2018年1月28日、青磁社、2800円。